『ぼくのゆめはだれもいったことのないとこに行って誰もみたことのないものにあうことです』


 僕のわがままな夢の始まり。そして未来への、『道』―………





夢の翼




 僕はあの夏、失いかけた大切な人一『白河ほたる』をもう一度取り戻した。
 そして、今日。朝凪荘と連名の表札との別れ。
 今日から暮らす一軒家では、『伊波』の下に二人の名前が刻まれることになる。
 藍ヶ丘にあるその家は、ここ数年空き家になっていた。だからこそ比較的値段も安目に手に入れられたのだけど。
 そして引っ越すにあたって荷物を片付けていたら、小学生の頃の作文が出てきたワケだ。

「懐かしいなぁ……」
「健ちゃん、そんな小さい頃のこと覚えてるの?」
「ん? いやサッパリ」
「それじゃ懐かしいって言わないよ〜」
「そうかな?」

 ほたるの声に少し反論を試みてみる。

「も〜、健ちゃんの想い出は今はいいから早く片付けるよ」
「ハイハイ」

ほたるは……この数年で変わったと思う。
昔のほたるなら飛び付いてくるかと思ったけど……
ほたるは落ち着いた。
言ってみれば大人っぽくなったってことだと思う。
ふと思い出してみる。

『ぼくが、ほたるを本当に好きだったってこと』

『白河ほたるさん、ぼくと付きあってくれませんか?』

『ぼくは、ほたるが好きだ。 それは今までも、これからも変わらないと思う。』

『ほたる、大好きだよ』


 迷ってたどりついた言葉。
 親友同士の板挟みの中できっぱり言いきった言葉。
 空港でねだられて言葉にした想い……。




 あれからもう数年が経った。
『ぼく』が愛していたほたるは、今少しだけ変わった。
そして『僕』は今、ほたるを愛している。
そんな風に想いをはせていると、声が飛んできた。

「健ちゃん、いつまで作文抱えてるの! 手伝ってよ〜!」
「あ、ごめんごめん」

 あれから僕は大学を卒業し、恋人や親友の影響かでそっちの世界に詳しくなった僕は森さんの建てたプロダクションで雇ってもらった。(たまに舞台に出されたりもするが)

 そしてほたるはウィーンの音楽院を卒業したあと、ピアニストとして帰国を果たし僕と同じ森さんのプロダクションに所属した。

 今ではCDを出せば並入る歌謡曲を押し退けてCDランキングに入ってしまうほどのピアニストだ。

 ほたるはどこに行っても人気者で、僕も『ほたるさんに近付くな!』等の手紙をもらったことが多々(たまにカミソリ入りも)ある。

「健ちゃん、手が動いてないよ?」
「あ、ハイハイ」

 また片付けを始めるほたる。

「なんでこんなに片付いてないのかな〜、明日結婚式なのに」
「う………それはまぁいろいろあって……」
「ふぅ〜ん」

 あからさまに疑っている目をしているほたる。

「そ、そんなことよりこれで朝凪荘も住人がいなくなるね」
「そうだね〜、あの火事で建て直してまだ数年なのに」
「う〜ん、でも大屋さんはわざわざ古く建て直したくらいだから」
「……うん、でも……朝凪荘は『帰って』…きたよ」

 ほたるはスッと立ち上がり柱を撫でて窓を開ける。

「あの夏に近付いてる……」

 そう言ってほたるは少し寂しげに微笑んだ。

「ほたる……」

 立ち上がり後ろから抱き締める。
 あれから、ほたるは少し背がのびた。顔をうずめるとちょうどほたるの髪が僕の顔をくすぐる。

「ほたる……あの夏が戻って来ても僕はもう迷わない……僕は迷ってあの時ほたるを傷付けてしまったんだ。それに、今迷ったって答えは変わらないから……」
「………うん……健ちゃん、ずーっと一緒にいられるんだよね?」
「うん……ほたるがおばあちゃんになっても」
「……うん…うん…」

 涙声で何度も頷くほたる。

「ほたる……」
「健ちゃん……」

ほたるが振り向く。
自然と唇が近付く。
そして―あと……数cm……

『ぃよぉ〜!イナケ〜ン、手伝いに来たゾ! 感謝しろ〜!』

「……」
「………」
『・・・・・』

……時が、凍った。

「どわわわわ、し、しししししし信くん?!」
「あ、わ、悪い!!」







「で、ここが今日から暮らす新しい家。」
「ここが健ちゃんとの新しい愛の巣だよ♪」
「……お前ら、誰にしゃべってんの?」
『あはは、気にしない気にしない』

声を揃えて信くんの質問に答えた。

「……」
『………』
「…………」
『……………』
「気にするわぁっ!」

信くんが暴れだしたちょうどその時、

『やっかましぃ! 人ん家の前で騒ぐんじゃねえ! 三途の川でいっぺん脳みそ洗濯してこい!』

隣家から怒声をあげながら見覚えのある男の人が飛び出してきた。

「……あれ?!…智也くん?」
「なに?! そうゆうお前は健?!」
「え? 智也くんの家ってココなの?」
「ああ、それよりお前らなんでここに? 唯笑! お〜い、唯笑!」
「なに〜? 智ちゃん? あれ? 伊波くんにほたるちゃん?」

呼ばれて少し大きなお腹の女の人が出てくる。

「あ、唯笑ちゃ〜ん♪ 久しぶり〜♪ お腹おっきくなったねぇ〜♪」

ほたると唯笑さんは久々に会ったからか仲良く話を始めた。

「……しかし……お前らの新居がよりによって三上家の隣とはな……」




『キャー、唯笑ちゃんあと何ヶ月?』




「ん?何だ、信。 いたのか」




『あと二ヶ月だよぉ♪ ほたるちゃんは?』




「……智也。 それが親友の言い草か?」
「その親友に借りを作ったままなのはどこのどいつだ。 とっとと金返しやがれな」




『ほたるはねぇ? まだまだだよぉ』




「あ、信くん僕も早くお金返してください」
「……お前らな、お前らみたいな幸せモンが俺みたいな一人者から金をふんだくるなんて……」




『ほたるはまだ二ヶ月目なんだよ〜』




ん?何かすごく重大なコトを聞いたような……
「それは多分信くんが身を固めないからでしょう」
「全くだ。正式に就職もしてない身分で」




『唯笑ちゃん、名前きめたの〜?』




「ちょっと待て! イナケンに言われるのはまだ許せる…が! 智也に言われるのは勘弁ならん!」
「何がだ、俺は今やこの国のテレビに無くてはならない存在だぞ? なあ健?」
「それに関しては……閉口させて」


 智也くんについては一浪の末に、大学に合格、順調に卒業し……今は大手テレビ局のプロデューサーになっている。
 ただ一つ、芸能人のマネージャーや駆け出しの役者に無茶苦茶をやらせる企画もあった事だけ言っておく。
 なんでも破天荒な企画ばかり思いつくので今では業界では良くも悪くも有名な人間になっていた。


 男同士の話し合いと女同士の話し合いでそれぞれ盛り上がっている中で、ふと、女の子同士の会話が耳に入ってきた。

『えぇっとね、智ちゃんと唯笑の子供だからね『智笑』(ともえ)なんて名前にしようかなって』



ーピタッー



 時が、凍った。少なくとも僕とほたるの時間が。
その耳に飛び込んできた単語に。頭の中に最近テレビへの露出も増えてきた一人の……友人、うん、友人。同じプロダクションに所属す駆け出し女優の顔が浮かぶ。


「それに俺だってルサックの店長代理やってるしcubic cafeの経営だって……」
「やかましい、アルバイト」




『ほたるちゃんは?』


 自分には関係ない話だと必死に頭からその『ともえ』という名前を追い出し、


「アルバイトで店二つも経営してるんだからすごいと言えばすごいような……」
「でも所詮アルバイトだろ?」
「お前ら、この国をまわしてるのは実質的にフリーターとアルバイターなんだぞ!!」



『健ちゃんには言ってないんだけどね、綾歌(あやか)にしようかなって』




今度は智也くんの表情が目に見えて凍りついた。

あっちでは唯笑さんも引きつった笑を浮かべているみたいに見える。

『………………』


「おい?二人ともどうした?」

 何にもわかってない信くんだけが状況を把握しようとしている。

『あ、あはははは…』

 一方僕と智也くんは渇いた笑いを浮かべるしかなく……

―――――――――って……

「ちょっと待った! ほたる!……赤ちゃん……いるの?」
「うん、いるよ♪今二ヶ月目だよ」
「……えぇ!なんで言ってくれなかったの!……っていうかいつわかったのそれ?」
「え〜っとね、一週間くらい前にわかったんだけど、………ついうっかり♪」

『……………』

「………………………」


……やっぱりほたるはほたるだった。

その場にいた全員が呆れていたのか口を空けたまま黙っていた。

「あれ?みんなどうしたの?」
「ほ、ほたる〜……そういうことはうっかりしないでよ〜……」

ほとんど泣き言に近いような声でうめく。

「あ、それより森さんに言った?ツアーの予定どうなってたっけ?」
「まだ言ってないよ」

あっけらかんとして言うほたる。

「全く……ほたるらしい……ほら、ほたる、行くよ!」
「え、どこに?」
「決まってるでしょ、事務所やほたるの実家や僕の実家!」
「うん!」




「全く、あの二人も相変わらずだな」
「いや、智也達も十分相変わらずだと思うが」
「あははははっ♪唯笑は信くんが一番相変わらずだと思うよ?」
「でも確か、あいつらの式って明日じゃなかったか?」
「そうだよねぇ、準備はきっと終わったんだろうけど……」
「イナケンの実家ってかなり遠いよな………」



 そして、次の日の式には主役のはずの二人が遅刻というこれまた彼等らしいハプニングが起きることとなる。

静流さんのコンボに良く耐えれた、とは健の談。


ちなみに、『智笑』、『綾歌』そして、ショーゴカナタ夫妻の長男の三人は『幼馴染み』となり、また新しい物語、次の『Memories Off』は続いていく……










「ホントにほたるといると色々見たことも無いような状況に毎回追い込まれるよ・・・」



TOPへ 創作物TOPへ



昔書いた作品ですねw

もう最後のオチが当時は面白いと思ってたんですよw

それが書きたいがタメだけに書いたSSw

自分でも不完全燃焼だけど、書きなおせるとも思えないのでそのままでww

文法とかもう治しようがないくらい崩れてるんだもんww

――――若かった。 inserted by FC2 system